「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しないことです」。絵本の冒頭の帯の文章に引きつけられ、手にした絵本。
今回ご紹介するのは、
「世界で一番貧しい大統領のスピーチ」です。
2012年、自然環境問題の国際的な会議で世界各国の代表が集まった際の、南米ウルグアイのムヒカ大統領の演説を編集した物語です。ムヒカ大統領は一国の主でありながら質素な生活をし、給料の大半を寄付して、田舎で奥さんと農業をしながら暮らしています。
その貧しい国の大統領のスピーチが、先進国の代表の心を動かすことになったのです。
私たちがこの地球に生まれてきた本当の意味は、「発展し、物をたくさん持つためではありません。幸せになろうと思って生まれてきたのです」。物に目を向け過ぎるのではなく、限られた命をどう幸せに生きるかを考えさせてくれる一文に、私はハッとさせられました。
家が欲しいと思ったのはなぜか。根本的には、家族との幸せな生活がその先にあるからではないでしょうか?
しかし、大人の日常は、目の前の現実、ローン返済や古くなった箇所の修繕で頭を痛めたり、知らない間に増えた家の物に溺れている状態かもしれません。今あるものに感謝し、本当に欲しいもの、心地よいものだけで満足する。それだけで、家も家族も幸せに暮らせるヒントになるかもしれません。
最後にムヒカ大統領の言葉で結びます。
「社会が発展することが、幸福を損なうものであってはなりません。発展とは、人間の味方でなくてはならないのです。人と人とが幸せな関係を結ぶこと、子どもを育てること、友人を持つこと、地球上に愛があること。発展はこれらを作ることの味方でなくてはならない」。
幸福だと思える以上の豊かさはない、と思わせてくれる深い絵本です。そして、幸福はやはり家族が基本。子どもたちに夢を与える大人でありたいですね。