「キッチンは対面式で、子どもの様子が見えたほうがいい?」
「リビングを通って、部屋へ行けるようにしよう」「リビングに本棚がほしい」。
家を建てようと決めた13年前、幼い息子と生まれてくるおなかの赤ちゃんのために、「どんな家にしようか?」と夫婦で一生懸命考えました。でも、全てを取り入れるとなると予算や間取りに問題が出たりで、悩んだものでした。
家は子どもの成長を見守る役割を持っています。子育ての相談で「どんな家が適していますか?」と質問を受けることがありますが、逆に「どんな子育てをしたいですか?」と伺うと、答えが曖昧な方が多いように感じます。
実は、私もそうでした。例えば運動をたくさんさせてあげたいのなら、「部屋は小さくなっても、庭に体を動かすスペースを!」。本好きになってほしいから「リビングに本棚を」など、子育ての軸をしっかり持っていれば、家づくりにも迷いが少なくなると思います。
今回紹介する絵本は
「おとうさんのちず」です。
作者のユリ・シュルヴィッツが、子どもの頃の戦争体験をつづった絵本です。
ありったけのお金を持って、町にパンを買いに行ったお父さん。
「パンはわずかしか買えないから、すぐにおなかが空いてしまう」と、パンではなく地図を買って帰ってきます。
ぼくは最初、父を恨みますが、やがて部屋いっぱいに張られたカラーの世界地図に魅了され、おなかが空いていることを忘れて、頭の中で世界旅行を楽しみはじめます。地図のおかげで空腹も貧しさも忘れ、はるか遠くで魔法の時間を過ごすことができたのです。
「やっぱりお父さんは正しかった」と父に感謝するという物語です。
作者は、やがて画家となって活躍します。さまざまな制限の中にあっても、親はいつも子どもに最大の愛を与えていることを感じる絵本です。家づくりが、子育てを考える機会を持つきっかけになれば幸いです。