12年前に新築したわが家は、いろいろなところに修繕が必要になってきました。
理想の家と思って建てた家も、住んでみると「ああすれば良かった、こうすれば良かった」と思う所もあり、「家は3回建てたら満足するって言うしね」、なんて言葉で納得してみたり。
しかし、家の視点から描かれた絵本が、家と真剣に向き合うことを改めて考えさせてくれました。
その絵本は、建築士でもある青山邦彦さんの
「おおきな やかたのものがたり」です。
大きく立派な館は貴族が住み、毎日パーティーが開かれ多くの人が館を訪れます。描かれている館は、まるでひげをたくわえた紳士のようです。
時代が進むにつれ館から住人は去り、ホテルに改装されます。
次はレストランになり、その次は商業施設に変わります。それでも館は人々が集まり、楽しんでくれることに満足していました。
そんなある日、館は大火事になってしまい見る影もなくなってしまいます。
そして最後に…、館は孤児院として修復され、今までのような立派さも美しさもなくなります。
しかし、子どもたちに本当に大切にされた館は、初めて温かい生活を手に入れます。やがて館の顔も穏やかなおじいさんのように。「もう、立派な建物じゃなくてもいいさ。子どもたちにとって一番の家になるぞ」とつぶやく場面が感動的です。
絵の美しさと緻密さも魅力ですが、家を擬人化し、時代とともに変わっていく人の人生に置き換えて表現しているところに、家を造るプロの思いを感じる絵本です。
家は建てるまでの過程も大切ですが、心地よい暮らしを継続するためには、きちんとしたメンテナンスも大切ですね。
家に感謝を込めてずっと大切に暮らしていけたら、家も住む人も最後は本当に手に入れたい幸せを得ることができるのかもしれません。人生の大きな決断と思いが詰まった家を、最後まで大切にしたいと改めて思わせてくれる絵本です。