感謝がつなぐ愛情のバトン

4月から5月の初旬にかけて行われた沖縄の年中行事の一つ、シーミー(清明祭)。ご先祖さまを大切にする沖縄が誇る、素晴らしい習慣だと思います。

まずご紹介する絵本は、

「ヌチヌグスージ いのちのまつり」

沖縄に初めて来たコウちゃん。面白い形をした大きな石のお家の前で、大勢の人がごちそうを広げて楽しそうにおしゃべりしたり、踊っている姿に目を丸くします。島のおばぁにたずねると、「私たちに命をくれた大事なご先祖さまのお墓参りさぁ~」と答えます。島では春になると親戚中が集まって、ご先祖さまに「ありがとう」を伝えるのです。

びっくりしているコウちゃんに、今度はおばぁがたずねました。「坊やに命をくれた人はだれね~?」。「お父さんとお母さん!」とコウちゃん。「そうだね。命をくれた人をご先祖さまって言うんだよ」。命をくれた人をどんどん数えていくと…、「もう、数えられないよ~」。初めて自分の命はすごいと気付きます。

おばぁはさらに言いました。「坊やもやがて結婚して、子どもが生まれるさぁ~ね。またその子が大きくなって結婚して、子どもが生まれるんだよ」。命は目に見えないけれど、ずっとつながっていることを伝えてくれる絵本です。自分の命はご先祖さまが誰一人欠けてもなかったんだと思うと、ありがたいことだとまたしみじみ思えます。

「ありがとう」と「あたりまえ」

自分に一番近いご先祖さま。それはやはりお母さんですよね。

次にご紹介するのは

「ラヴ・ユー・フォーエバー」

母親としての一生を描いた絵本です。

生まれてきた赤ちゃんを大切に育てるお母さん。やがてイヤイヤ期、反抗期、思春期がやってきます。

お母さんは葛藤しながらも、夜ぐっすり眠った息子を抱きしめながら、「アイ・ラヴ・ユー いつまでも アイ・ラヴ・ユー どんなときも わたしがいきているかぎり あなたはずっとわたしのあかちゃん」と毎日語りかけます。

やがて成人した息子もまた、わが子が生まれた時に同じように語りかけます。愛情を持って育ててもらったからこそ、愛情のバトンが続いていくのでしょう。

熊本を中心とした震災が起こり、現実を目の当たりにするたびに、日常のありがたさに気付かされ、命の大切さも改めて気付くことができました。「ありがとう」の反対語は「あたりまえ」だそうです

「あたりまえ」の日常は、つい感謝を忘れてしまいがちですが、「あたりまえ」ほどありがたいことはないのかもしれません。いま一度大切な人に「ありがとう」を素直に伝えたいと思います。